鈴鹿の家

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古くからの集落の中心である寺院の庫裡を、自宅兼庫裡に建て替えた計画です。

既存の庫裡は境内側から軒の深い外観が来訪者を出迎え、隣接する神社の森を借景とした立派な苔の中庭を眺められる座敷が接客の場として使われていましたが、老朽化が進んでいました。
クライアントからは、集落の拠り所である寺院の庫裡としての機能を継承していくことと、自宅部分は別世界としてリラックスして過ごせること、雨に濡れずに双方に移動できる一つの建物であることが求められました。

そこで、中庭を中心に庫裡と自宅の諸室を扇形に配置することで、互いに適度な距離を保ちながらも恵まれた周囲の環境を最大限に享受できる平面計画として、立面的には境内から見ると大屋根の庫裡、裏から見ると2階建ての自宅として、棟を境に2つの顔を持つ1つの建築として構成しました。

庫裡内部は、気積が大きく中庭の風景がパノラマに広がる座敷が、普段使いの接待の場として、また第二のリビングとしても使われ、その奥の格式ある座敷とつながります。また以前の建物で使われていた襖や違い棚などが、庫裡の記憶を継承しています。
自宅内部は、棟から滑り降りる屋根が周囲の景観を切り取りながら住空間を分節し、2階洗面スペースから中2階のライブラリー、1階リビングダイニングまでをシームレスにつなげています。

自然光に満ちたリビングダイニングや趣味室、ライブラリー。
リビングダイニングと一体的につながり、家族や友人とバーベキューを楽しめるウッドデッキ。
鳥の声や虫の音を聴きながら、森の向こうの空を眺められる露天風呂。

連綿と続く庫裡の歴史を受け継ぎながら、自分たちが本当に心地よいと思える時間を過ごすことができ、家族や友人、来訪者の方々が心地よく集うことができる「家」として、未来に繋がっていければと願っています。

Principal use住宅
Total floor area287㎡
Address三重県鈴鹿市
Completion date 2023.12
Constructer(株)上村工建
Work contents 設計・監理
Representative丹羽 浩之・白井健太郎・(有)堀内建築研究所
Photographer米田正彦写真事務所

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